メンターからのコメント
数字を語るとは、
現場を守るということ
数字の根拠を語るというのは、理屈の話だけではありません。
現場では、この「見積の攻防」で信頼が生まれるか、崩れるかが決まります。
特に、システム開発・インフラ構築・コンサルティングの業界では、
いまだに「工数見積」や「どんぶり勘定」が主流です。
一方で、ホームページ制作・動画制作・ライティングなどのクリエイティブ領域では、
“1時間いくら”ではなく、“1本いくら”という成果ベースに変わりつつあります。
この違いが、業界全体の見積文化の成熟度を物語っています。
DXやシステム開発の現場では、
RFP(提案依頼書)を作る側が曖昧なままベンダーに丸投げするケースが非常に多い。
ベンダー側はリスクを見越して多めに工数を積む。
発注側はその理由を理解しないまま価格だけを比較する。
こうして“誰も本当の数字の意味を語れない”見積が生まれていきます。
RFPが曖昧なら、ベンダーは守りに入る。
RFPが明確なら、ベンダーは利益をどこで取るかを工数でぼかす。
この「見積の駆け引き」が現場では日常的に起きています。
でも、ここで忘れてはいけないのは――
利益をとることは悪ではないということ。
むしろ、利益を正しく設計し、説明できることこそが信頼の証です。
「原価はいくらで、利益はいくらか。」
この構造を自分で把握しておくことが、対話の前提になります。
不測のトラブルや仕様変更が起きても、
どこに余力があり、どこが限界かを自分で判断できる。
そして、発注側も「おおよそのコスト構造」を理解したうえで発注できれば、
多少の増減があっても冷静に受け止められます。
この“理解の共有”こそが、数字が信頼を生む瞬間です。
実際、私の知る企業では、
初回160万円で始まったプロジェクトが、
根拠のない工数見積の積み重ねによって最終的に年間5,000万円規模まで膨れ上がった例もあります。
これは極端な話ではなく、数字の構造を見抜けなかった結果です。
数字の根拠を語れることは、相手を納得させる技術であり、
自分を守るリスクマネジメントでもある。
そして、世の中の相場や流行に流されず、
「この数字で本当に妥当か」を判断できる目利き力を持つこと。
これが、40代リーダーに求められる“実践的な数字思考”です。
そして――
数字を語れるようになった次のステップは、
その数字を経営の言葉に翻訳する力を身につけることです。
現場の“実感”を、経営層の“判断基準”に変換できる人が、 本当の意味でDXを動かすリーダーになります。